研究業績
社会構想研究 4, 2, pp.57-66 (2023)
【論文】「不確実性」の高い災害をめぐるテレビ局によるリスク・コミュニケーションのあり方:新型コロナウイルス関連報道を端緒として
著者
橋本 純次 坂田 邦子 三浦 伸也 鈴木 優香理 久保田 彩乃
カテゴリ
メディア論 × リスク・コミュニケーション
Abstract
新型コロナウイルス(COVID-19)に関するテレビ報道は,「災害の影響が特定の地域に限定されない」,「災害現場が特定できない」,「専門家の知見への依存度が高い」,「対応策の『正解』が日々更新される」といった点で従来の自然災害報道とは一線を画すものであった。本稿では,2020年1月以降に国内のテレビ放送事業者が直面した困難とその解決策について「リスク・コミュニケーション」の概念を端緒として考察する。本稿では,全国のテレビ局を対象としたアンケート調査と6社9名を対象としたインデプスインタビュー調査を実施し,「不確実性」の高い災害においてテレビ局によるリスク・コミュニケーションの促進がいかなる条件のもと可能か検討した。調査により得られた知見から,「視聴者ニーズ把握の困難」と「科学的根拠の検証能力の不足による専門家依存」というテレビ局の直面する課題を解決するため,「災害報道に関するメタ知識の提供」,「災害/科学技術担当記者の役割の見直し」,「記者のリカレント教育の強化」の3点を提言した。